ペットにマイクロチップを装着させるとどういった効果があるのか

今年の6月より、いよいよペットのマイクロチップ装着の義務化が始まりました。これからペットを飼うご家族は、おそらく既にマイクロチップを装着したペットを飼うことになるでしょう。また、今ペットを飼っているご家族にも、マイクロチップ装着を努力義務という形で強く推奨されています。

しかし、日本ではまだまだマイナスイメージが付きまとう中、急に『マイクロチップを装着させてください』と言われて、戸惑っている人も多いのではないでしょうか?

そこで今回はマイクロチップの構造や期待されている効果、副作用の有無について解説していきます。

目次

1マイクロチップの基礎知識

マイクロチップはワード自体の知名度は高いですが、具体的にどういった器具なのかまでは知らないという人も多いです。まずはマイクロチップについての基礎知識を見ていきましょう。

1.1マイクロチップは極小の電子標識器具

マイクロチップは直径2mm、長さ8〜12mm程度の極小の電子標識器具です。電子標識器具と聞くとなんだか難しそうですが、簡単に言えば名札やマイナンバーのように個体を特定するための識別番号が書かれた器具のこと。実際に認識させる時には専用のリーダーを用いるため、そういった意味では商品のバーコードのような役割とも言えますね。

マイクロチップの内部には15桁からなる識別番号が記載されており、リーダーを使って番号を読み込ませます。そして、予めデータベースに登録した情報と照らし合わせて、誰のペットなのかを特定することが出来る仕組みです。15桁の数字の羅列はそのペット専用であり、組み合わせも900兆程度存在するため、まず数字が被ることはありません。

現在はペットショップ等の業者は、このマイクロチップを必ず装着させなければいけない義務が課せられています。一方、元々飼い主に飼われているペットに対しては、あくまで努力義務となっています。ただし、装着させる場合はデータベースへの情報登録が義務付けられますのでご注意ください。

1.2マイクロチップが持つ役割

マイクロチップは名札のような物だと説明しましたが、チップそのものはただの数字の羅列でしかなく、それ単体では機能しません。専用のリーダーで読み取る事で初めて意味をなすため、基本的には飼い主を含めた一般の人がマイクロチップを活用する事はないでしょう。

マイクロチップは警察や基礎自治体などの行政や動物病院、愛護センターの人達がデータベースを照合する時に効果を発揮します。データベースの情報も、事前に発行されているIDとパスワードでデータベースにアクセス後、マイクロチップに記載された識別番号で登録情報を閲覧するため、第三者に悪用される心配もありません。

いわばデータベースは情報の金庫、マイクロチップはその鍵という関係。マイクロチップ装着後のデータベースへの登録が必須なのは、いくら鍵があっても金庫の中身……即ち登録情報が無ければなんの意味もないからです。

1.3マイクロチップは世界でどう活躍している?

日本では導入が遅れたものの、世界ではアメリカやイギリス、スウェーデンなど既に様々な国がマイクロチップ装着を義務化しています。また、義務化される前からマイクロチップやタトゥーなど【身体から外れない方法】で個体を識別する手段が当たり前だったという国も

例えばスウェーデンでは識別番号関係の法律が、なんと2001年には既に制定されていました。その前にも飼い主達の意志でペットをIDで管理するようにしていたなど、ペットに対する認識は他国と比較してもかなり進んでいた印象です。

他にも、イタリアではマイクロチップを装着した犬は飼い主と一緒に海外旅行できるようになったり、早くから導入を進めていたEU全域では既に二千五百万頭ものペットが装着を完了しているなど、世界では心強い味方として信頼されているようです。

2マイクロチップは本当に装着すべきなのか

世間ではマイクロチップの義務化ばかりが注目されており、それによって何が起きるのかがあまり認知されていません。そのせいか、一部では義務化に反対する声も出ています。

ここではマイクロチップの義務化と世間の反応、装着する意味について解説します。

2.1マイクロチップ装着の義務化と市民の反応

日本では令和4年6月からブリーダーやペットショップなどの事業者に対して、マイクロチップの装着を義務付けられました。また、飼い主に対しても努力義務が課せられています。努力義務は【そうするよう努めなければならない】、法的拘束力は無いですが可能な限り実行してくださいという意味です。

さてこのマイクロチップの義務化、賛否両論がキッパリと別れているのが現状です。賛成派の意見として【ペットが迷子にならなくて済む】【殺処分が減る】といった利便性や殺処分の観点から見たものが目立ちます。一方で反対派の意見では【身体に異物を入れるのが可愛そう】【愛護団体の負担が増える】など、健康面での不安視や資金面の圧迫についての意見が多いです。

また、賛成派の中でも【義務化はどうなのか】といった行動の強制を疑問視する意見が散見されました。

2.2マイクロチップが導入されるとどうなるのか

ペットにマイクロチップを導入すると期待できる効果は、やはり【迷子になった時の対策】と【殺処分を減らす】の2つが大きいでしょう。実はこの2つ、まったく違うようで実はどちらも【飼い主を特定できることで解決する】という意味ではほぼ共通しています。

「迷子はわかるけど、殺処分に関係しているの?」と疑問に思うかもしれませんが、実はこれは殺処分の現状に秘密が隠されているのです。犬や猫が保健所に引き取られる理由は主に【所有者が不明】と【飼い主からの引き取り】であり、約9割が前者の所有者が不明なケースである事が分かっています。いわゆる捨て猫や捨て犬達ですが、

マイクロチップを導入する事によって元々の飼い主が分かりますし、そうなると飼い主もそう簡単にペットを捨てようとはしないでしょう。最悪の場合、動物虐待という扱いになる恐れもありますから。

2.3マイクロチップの危険性

マイクロチップは電気も流さず、身体にも悪影響を与えない物ですが、一方で明確な懸念点があります。【市民への周知不足】と【悪徳業者の存在】です。

前項でもお話しましたが、マイクロチップの導入義務化は反対の意見も多く、中でも飼い主様の身体への悪影響を懸念する声が目立ちます。構造的なお話やマイクロチップの原理などはどうしても専門的なワードが飛び交うため、一般市民の理解を得づらくはありますが、それを考慮したとしても、政府や動物病院による啓蒙活動が足りていないのが現状です。

また、例え義務化したとしても悪徳業者や身勝手な飼い主が消えるとは限らないのも問題点。元々捨てる事も視野に入れた販売、飼育では、まずマイクロチップを装着させないでしょう。今現在飼っているペットに対してはあくまで努力義務なのも、それを後押ししています。海外ではマイクロチップの反対は罰金を課せられますが、日本ではこれといった罰則もありません。

とにかく飼い主達への啓蒙活動不足と、悪徳業者や身勝手な飼い主に対する対策、これらを解決しない限り、完全にマイクロチップが広まり切る事は難しいです。

3マイクロチップの装着方法

マイクロチップの装着は動物病院で行い、その後データベースに登録する事で完了します。しかし、具体的にどのようにチップを装着するのか、装着することによる副作用は本当にないのか、気になることも多いでしょう。

ここではマイクロチップの装着方法や副作用の有無について解説します。

3.1マイクロチップの装着と登録

マイクロチップは獣医師が注射器を使って皮下注射して埋め込みます。一度埋め込んでしまえば半永久的に識別番号の読み取りができますので、その後の手術などはありません。埋め込みが可能になる時期は品種によって異なりますが、犬は生後2週目、猫は生後4週目ほどで可能です。

マイクロチップを埋め込むと、30日以内に動物病院から発行された証明書を使ってデータベースに飼い主の情報を登録します。登録はインターネットで行えるため、お時間もかかりません。またデータベースでは他にも、所有者の変更時の手続きや死亡届の手続きも可能です。

・データベースへの登録はコチラから

動物の愛護及び管理に関する法律に基づく犬と猫のマイクロチップ情報登録

URL https://reg.mc.env.go.jp/

コールセンター 03-6384-5320(受付時間:8時00分~20時00分 ※土日祝日可)

3.2マイクロチップに副作用はあるの?

マイクロチップを身体に埋め込むと言っても、実際に埋め込まれるのは皮下と呼ばれる皮膚の一番下の部分です。整脈に行き着くことはないため、内蔵など臓器にまで流れることはありません。また、マイクロチップの外部は生体適合ガラスやポリマーなど人体に影響がない素材で覆われています。

肝心のマイクロチップも、番号が記載されているだけで電磁波が流れているわけでもなく、電池で動いているわけでもないため、健康に悪影響を与える可能性は限りなく低いと言えるでしょう。

3.3人から譲り受けた場合

マイクロチップの装着が義務付けられた今、誰か他の人からペットを譲り受けたとき、そのペットがマイクロチップを装着している場合としていない場合に分けられるでしょう。譲り受けた側は、ペットが既にマイクロチップを装着しているかどうかを予め確認する必要があります。

既にマイクロチップを装着している場合、データベースの飼い主情報の変更を行う必要があります。変更手続き自体は証明書があればインターネットで行えるため、そう難しくありません。

譲り受けたペットがマイクロチップを装着していない場合、譲り受けた側は任意(努力義務)でマイクロチップを装着できます。もしマイクロチップを装着させる場合は、データベースへの登録が必須となりますのでご注意ください。

4マイクロチップにかかる期待と不安

マイクロチップは既に世界各国で役立っており、その有用性や安全性はほぼ確立されているといっても過言ではないでしょう。しかし、それでも日本ではまだまだ完全に信頼されきっていない印象です。マイクロチップで救える命は1個につき一つ、殺処分される数を少しでも減らす為には、より多くのペットがマイクロチップを装着する必要があります。

動物病院や行政によるマイクロチップの安全性と効果の説明、すなわち啓蒙活動がまだ足りていない現状。少しでもマイクロチップの正しい知識が広がって行く事を願うばかりです。

天国への扉コラム