老猫がご飯を食べてくれない理由と対策について

老猫がご飯をあまり食べてくれない……そういった悩みを持つ飼い主様は多いです。若い頃にたくさん食べていた猫なら、なおさらその違いに戸惑うでしょう。

今回は老猫がご飯を食べなくなった理由や、少しでもご飯を食べてもらえるような方法についてお話していきます。

目次

老猫がご飯を食べない理由

成猫と老猫には、維持できる筋肉の量や基礎代謝など様々な違いがあります。そういった理由も含めて、ご飯が食べない理由を見ていきましょう。

老化によって食事量が減った

まず大前提として、老猫になると食事量そのものが減るのは当たり前のことです。老化によって筋肉が衰えたことで、生活する上で必要なエネルギーである基礎代謝が落ちているため、一日に摂取すべきカロリーの総量が減っています。カロリーが少なくて済む、つまりご飯の量も少なめで十分というわけです。

また、『食べられなくなった』という部分もあります。高齢になった事で睡眠時間が増えて活動時間が減っている事や、消化器官が衰えてきているため、若い時のようにバクバク食べる事が出来なくなっているのです。

ただし、必要なカロリーが減っているだけで、必要な栄養素を摂取しなければいけないのには変わりありません。食事の方法やカロリー計算を見直す事が大切です。

好きな味が変化した

猫は好き嫌いが激しい動物で、嫌いな物は口にしません。簡潔にいえば、とても偏食なのです。運動量が変わらない、食事する前までのテンションに変化がないようであれば、単純に今まで食べていたキャットフードに飽きてしまっただけかもしれませんね。

また、キャットフードに栄養剤などの薬を入れて味が変わったなどの特殊な理由があると、たとえ薬を入れていなくても元のキャットフードを食べなくなることがあるようです。もし心当たりがある場合は、キャットフードを変えてみたり、レパートリーを増やしてみましょう。

病気の可能性

病気の中には、元気消失や食欲不振が初期症状として見られる物も多く、見た目や行動に変化が現れないケースもあるため、「高齢だから仕方ない」と見過ごしてしまう可能性もあります。最近になって食事の量が減った、少しだけ元気がないように見えるなどの違和感を感じたのなら、一度病院で診察してもらった方がいいでしょう。

特に気を付けるべきなのが慢性腎臓病です。この病気は初期症状が多飲多尿くらいしか現れず、食欲不振などの症状が出た時には既にかなり進行している事があります。

その他にも、猫は口内トラブルが非常に多い動物として知られています。口内炎や歯周病などで食べ物を口に入れたくないなんて事もあるため、口を気にしている場合は口内トラブルの可能性がありますね。

ご飯を食べなくなる病気

老猫が急にご飯を食べなくなったのなら、何か病気を患っているのかもしれません。ここでは食欲不振が症状にあるものや、猫がかかりやすい病気について見ていきます。

慢性腎臓病

慢性腎臓病は高齢期に突入した猫が発症しやすい病気です。別名『慢性腎不全』とも呼ばれているため、こちらの方が分かりやすいという人も多いでしょう。初期症状では多飲多尿程度の症状しか見られず、行動や元気に変化が出にくい病気としても知られています。

一方で、この多飲多尿が見られた時には既に腎臓の全機能のうち4分の1ほどしか生き残っていないとされており、食欲不振が見られた際は尿毒症というかなり病気が進行している可能性もあります。仮に早期発見が出来ても、失った臓器の機能が戻る事はありません。

ただし、早期発見・早期治療に努めることで生活のクオリティを維持する事ができる病気でもあります。定期的な健康診断、規則正しい生活、十分な栄養の摂取を心がけ、尿の状態を見て「おかしいな」と感じたらすぐに動物病院で診察してもらうようにしましょう。

歯周病や口内炎

猫は虫歯にならない動物ですが、代わりに歯周病や口内炎といった口内トラブルが非常に多いです。特に歯周病は、全猫のうちおよそ7割がかかっているとも言われるほど身近な病気として知られています。

歯周病は私たちにとっても身近ですが、放置すれば歯が抜けるだけでなく、炎症が進むと顎の骨を溶かして皮膚を貫通する事もある恐ろしい病気です。猫の場合、歯周病の原因でもある歯垢(プラーク)が歯石へと変質する期間が人間よりも短いため、歯磨きだけでは完璧な対策とは言えません。定期的に動物病院で歯石除去を依頼するようにしましょう。

また、口内炎もよくある猫の病気の一つであり、歯周病と併発することもあります。初期症状では少し口内が赤く腫れる程度しかみられませんが、症状が進行すると強い痛みが生じます。場合によっては『奥歯だけ抜く』『全部の歯を抜く』といった外科治療が必要になるため、口内ケアを欠かさないようにして病気になりにくい口内にしてあげましょう。

糖尿病

糖尿病は初期段階だと食欲が増しますが、病気が進行すると逆に食欲不振になります。この段階まで来るとかなり危険な状態であり、場合によっては集中治療をしなければ命に関わる事もあるようです。

また、最初の段階なら減量や食事制限などの生活の見直しで改善できますが、段階が進んでいくとインスリンを自分で作れなくなってしまい、生涯に渡ってインスリン注射をしなくてはいけなくなります。

近年はキャットフードやおやつも多種多様な物が販売されるようになり、嗜好性の高い高級品なども増えてきました。これらも適切な量だけ与える分には健康に良いですが、過度に与えると肥満や糖尿病のリスクが高くなります。猫のためにも、食事や運動を意識した健康的な生活を送らせてあげましょう。

老猫でもご飯を食べてくれる方法

老猫でも、食事の大切さは変わりません。ここでは老猫になった後でもご飯を食べてくれる方法について見ていきます。

キャットフードを変える

老猫のご飯は、味だけでなく『硬さ』も大切。顎の筋肉が衰えているため、カリカリだと硬くて食べられないといったケースが起こる可能性があるためです。老猫はカリカリよりも柔らかいウェットフードを好む事も多く、また水分量が多いと匂いが強くなるため嗜好性が高まります。

ただ、ウェットフードだけだと顎を鍛えて筋肉を維持する事が難しくなります。その場合は、おやつや噛むタイプのおもちゃをうまく使ってトレーニングしてあげましょう。

ご飯の食べやすい位置

猫は食道から胃までの通り道がほぼまっすぐという構造をしており、床に置かれたご飯を食べられるようにはなっていません。そのため、無理して食べようとすると食道が曲がってしまい、ご飯を吐き出してしまいます。また、老猫の場合は関節への負担も大きいでしょう。

猫にご飯を与える際は、食器を猫の身体と水平になる位置に配置してあげると食べやすくなります。足付きの食器や台の上に乗せるなどして、ちょうど良い位置でご飯が食べられるように調節してあげましょう。

強制給餌の検討も

加齢や病気、怪我によってご飯を自分で食べられない猫に、飼い主様が強制的に与える事を強制給餌と呼びます。『強制』というワードが入っているため、どうしてもマイナスイメージを持ってしまいますが、実際にはとても大切な事です。

生き物は必要な栄養を摂取できなければ生きていけません。特に猫の場合、数日間絶食すると肝リピドーシスという肝臓疾患になってしまい、強制給餌しなければ生命を維持できなくなります。また、寝たきりの猫にも同じことが言えますよね。

強制給餌は決してベストな選択肢と断言できるものではありませんが、食べないデメリットに比べればマシという場面も多いです。最終的には獣医師や飼い主様の判断にはなりますが、こういった方法があるという事だけでも覚えておいてください。

老猫にご飯を食べてもらうためには

老猫の食事において重要なのは、『量』ではなく『質』です。成猫の時ほどたくさんご飯を食べられない老猫にとっては、少量でも美味しく栄養のある食事を出してもらう方が嬉しいでしょう。

また、あまりにご飯を食べないようなら、病気の可能性を考慮して動物病院に相談する事も考えましょう。

天国への扉コラム