犬の白内障はどのような病気なのか、症状と治療法について解説

犬が発症しやすい病気の一つである白内障。目が白く濁り、見えづらそうにしている姿は見ているこちらも辛くなるほど。白内障はそのまま放置してしまうと、失明や合併症のリスクも高くなる危険な病気です。同時に、早期に発見しないと、たとえ治療したとしても合併症を患ってしまう可能性も……。

今回はこの白内障について、症状や治療法を交えて見ていきましょう。

目次

犬の白内障とは

白内障はその名の通り目が白く濁る病気です。見た目のインパクトは強いですが、果たしてそれによって何が起きるのでしょうか。まずは白内障とは何なのか、その原因は何なのかについて見ていきます。

目が白く濁る病気

白内障は目が白く濁る事で、視力がだんだんと低下していく病気のことです。より正確に言えば、『目の中にある本来は無色透明な水晶体が白く濁る』というもの。水晶体は水とタンパク質で構成された組織で、カメラの凸レンズのような役割を持っています。

この水晶体は見る距離によって厚さを変える事ができ、近くの物ほど厚くなり、遠い物ほど薄くなる事で光の屈折率を調整します。簡単にいえば、ピントを合わせてくれるのです。このおかげで、私たちはこの世界を歪ませることなく見れるわけですね。

白内障はこの水晶体が何らかの要因で白く濁ることで、目に入る光を阻害してしまい、見えづらくなってしまいます。また、白濁することで光が乱反射し、極端に眩しくなる事も。

白内障の原因

人間の白内障の主な原因は加齢によるものですが、犬の場合は若年性白内障……つまり若い時から白内障になるケースも多いです。特に糖尿病になった犬はある理由からほぼ確実に白内障も併発すると言われています。

糖尿病は血糖値が高い状態になる病気。血糖値が上がる事で、血液中のブドウ糖やソルビトール、糖化によってできた老廃物が水晶体に溜まっていきます。それによって目の中の浸透圧が変化してしまい、糖がより多く水分を取ろうとした結果、水晶体が濁ってしまうのです。

また、この他にも数は少ないですが、遺伝によって白内障になってしまう事もあります。

白内障は予防できない

白内障は遺伝や加齢、糖尿病などの病気の他、ケガによって発症するケースもあり、とてもじゃありませんが完全に予防する事はできません。とはいえ、発生原因を遠ざける事で可能な限り進行を遅らせる事はできます。

例えば、強い紫外線を避ける、怪我をさせない、抗酸化作用のある食事を心がけるなどですね。また、先述したように糖尿病にかかった犬はほぼ100%の確率で白内障を発症するため、糖尿病を含めた生活習慣病にかからないようにするのも有効です。

適度な運動と健康的な食事を忘れずに、愛犬には常に元気で過ごしてもらいましょう。

犬の白内障の主な症状

白内障は端的に言えば『目が見えなくなる病気』ですが、発症した瞬間に見えなくなるわけではありません。白内障は初期、中期、成熟期、過熱期の4段階に分かれており、段階が進むにつれて症状が深刻化していきます。

白内障の初期症状

白内障の初期段階の症状は、はっきり言ってほぼありません。通常よりも少し目が悪くなりますが、犬の日常行動にはほとんど支障がないためです。また、白内障による水晶体の白濁も、この段階だとほとんどありません。

犬も通常通りの生活を送り、見た目的にもそこまで目に違和感がないため、全然気づかなかったという飼い主も多いです。白内障は、この『初期段階だとほぼ分からない』というのが最も恐ろしい点だと言えるでしょう。

そこからだんだんと水晶体が白く濁り始めると、やがて『中期』という段階へと進行します。この段階まで来ると、犬も自分の視力に違和感を持つような仕草をしたり、障害物にもギリギリまで気が付かないなどの異常が見られます。

白内障が進行すると

白内障が中期よりも更に進行していくと、やがて白濁が目の全体を覆うようになり、飼い主の目から見ても明らかに異常が分かるようになります。この状態だと目もほとんど見えなくなっていますが、先述したように眩さを感じるようになります。また、至近距離で動くものには反応するようです。

恐ろしいのが、若年性の白内障だとこの段階(成熟期)に入るまでおよそ1週間しかかからないということ。初期〜中期までの進行も分かりづらいため、気がついたらいつの間にか目が白く濁っていたという事もあります。

更に末期まで進行すると『過熱期』に入り、水晶体のタンパク質が液化、融解します。

白内障の合併症

白内障は成熟期に入ると、手術の有無に限らず合併症のリスクがあります。ここでは特になりやすい合併症を4つ、簡単に見ていきましょう。

・ぶどう膜炎

ぶどう膜とは色彩、毛様体、脈絡膜の総称です。ぶどう膜炎はこのぶどう膜に炎症が起きる病気で、充血や強い痛みを伴います。

・緑内障

目の中の水が溜まる事で眼圧が上がり、目の痛みや視覚障害が起こります。また、その名の通り目の色が白っぽい緑になります。

・網膜剥離

目の奥の網膜が剥がれ、視力が急激に低下します。

・水晶体脱臼

水晶体が本来あるべき位置から離れている状態。強い痛みを伴う上に、上記3つの病気を併発しやすいです。

犬の白内障の治療法

白内障の恐ろしいところは、水晶体の濁りそのものを止めたり無くしたりする事はできないという点。つまり、失った視力が戻ることはありません。では、白内障になったら、どのような治療が施されるのでしょうか。

初期~中期の治療法

白内障になり始めの段階である初期〜中期は、点眼薬とサプリメントで進行を遅らせる内科治療をします。失った視力が戻る事はありませんが、早期であれば生活に支障が出る可能性を減らす事ができます。

成熟期~過熱期の治療法

白内障が進行している成熟期〜過熱期では、眼科の専門医による外科手術を行います。また、この手術は眼底などの各機能が正常に働いている時のみ可能です。

具体的な手術としては、使えなくなった水晶体を摘出し、人工のレンズを目に入れて視力を戻します。ただし、手術による負担が多い他、合併症を引き起こす可能性があります。ただし、手術しない方が合併症のリスクが高い点は留意してください。

治療の危険性

白内障の手術の成功率は約90%と言われており、成功率こそ高いものの絶対ではありません。失敗に終わる原因は前項でお話したぶどう膜炎、緑内障、網膜剥離が併発するため。また、この合併症自体は手術が成功したとしても発症する事があります。

ただし、これらの合併症は早期に発見すれば発症するリスクを抑えることができます。白内障は早期発見・早期治療が大切なのは、こうした合併症のリスクも理由の一つです。

犬の白内障は危険

白内障は犬の病気の中でも特に発症しやすい病気で、1度発症すると進行を抑えることしかできません。水晶体を人工レンズに取り替える事はできますが、手術自体のリスクも高く、合併症の危険もあります。かといって、手術をしないという選択をしても、むしろ合併症のリスクは高くなる一方。

白内障を知る上で大切なのは、とにかく『早期発見』と『健康的な生活』です。早めに白内障だと判明すればお薬で進行を抑えられます。また、適度な運動と適切な食事で生活習慣病を防ぐ事でも、白内障のリスクを下げることができます。

愛犬の目を守るためにも、毎日の健康を心がけたペットライフを送りましょう。

天国への扉コラム