猫が爪とぎをする理由と訓練方法について

猫を飼っている人にとって、爪とぎは悩みの種。一生懸命に爪を研いでいる姿は微笑ましいものの、それによって部屋がめちゃくちゃになってしまうのは困りもの。しかし、だからって猫に無理やり止めてもらうのは可哀想です。

今回はなぜ猫が爪とぎをするのか、そして猫の爪とぎはどういった対策をしたらいいのかについて解説していきます。

目次

猫が爪とぎをするのはなぜ?

そもそもなぜ猫は爪を研ぐのでしょうか?爪の長さは飼い主様がちゃんとお手入れしていれば気にならないはず……。実は猫が爪を研ぐのには、ちゃんとした理由があるのです。

ここでは猫が爪とぎをする理由について解説します。

爪の鋭さを保つため

可愛い姿を見てるとつい忘れてしまいそうになりますが、猫は自然界において優秀なハンターであり、特にその爪を活かした狩猟が得意な動物です。飼い猫になった今でもその本能は残っていて、鋭い爪を維持するために爪とぎをしています。因みに、これは猫だけでなく同じネコ科であるライオンやトラなどでも見られる行動で、稀にサファリパークや動物園で爪とぎをしている姿を見ることができます。

爪を研いだ場所をよく見ると猫の爪が形を保ったまま落ちていることがありますが、これは爪の表面だけが剝がれたもの。猫の爪は多層になっており、古い角質である上の爪を研ぐ時に剥がし、新しく鋭い爪を出しているのです。初めて見た飼い主様は驚くかと思いますが、極めて普通のことであり、慣れている人の中にはコレクションしている人もいます。

マーキングのため

猫と言えば、ぷにぷにとした肉球!と答える人も多いのではないでしょうか?肉球には足音を消して獲物に気づかれずに接近したり、ジャンプしたときの衝撃を和らげる役割があります。しかし、実はもう一つ……マーキングとしての役割も持っているのです。

ここには【臭腺】という強い匂いを発生させる分泌腺があり、爪を研ぐ時に臭腺からフェロモンを放出して「ここは自分の縄張りだ」と主張します。更に高い位置に爪痕を残すことで自分をより強く、より大きく見せることで視覚的にも縄張りを知らせる効果があります。

気分転換したいため

猫は気に入らないことがあってストレスが溜まっている時や、気分転換したい時に爪とぎをすることがあります。特に飼い猫となった現在は、自分の家こそが絶対の縄張りです。そこに来客などで面識のない人がやってきたり、もしくは外にいる動物の気配を感じるなどしてストレスが溜まったら、マーキングも兼ねて爪とぎをすることも。

もしお仕事の都合や友人との交流などで来客が多いのであれば、ゲージや隠れられる場所などの猫が一匹になれる場所を用意しておきましょう。

飼い主への要求のため

爪とぎをした時に、飼い主から何らかのリアクションがあった場合、猫が「ここで爪を研ぐと反応する」と認識します。すると、構って欲しい時や何かをお願いしたい時など【関心を引く】という目的で爪とぎをする事があります。単純に寂しい時にすることが多いようで、もし自分の目の前まできて爪とぎを始めた場合はスキンシップを取ってみましょう。

要求行動として爪を研いだ場合は、研いだ場所や状況で判断します。例えば、扉やその周囲の柱を使って爪とぎをしていたのなら、外に出してほしいという要求の可能性があります。

猫の爪とぎ訓練ともしものための対策グッズ

爪を研ぐのには色々な理由があったのですね。しかし、だからといって部屋を荒らされるのは別問題です。ちゃんと訓練して、猫にとっても飼い主にとっても快適な生活を送れるようになりましょう。

ここでは猫の爪とぎ訓練の方法と爪を研いで欲しくない場所への対策について解説します。

猫は爪とぎを止められない

猫の爪とぎを対策するといっても、爪を研ぐという行動そのものを止めさせるというわけではありません。前項で解説したように猫にとって爪とぎには様々な意味があり、本能行動でもあるからです。性格や個体差によっては爪とぎをしない猫もいますが、【今まで爪とぎをしてきたのに急にやらなくなった】というようなケースの場合は何らかの不調を疑ったほうが良いでしょう。

では対策とは具体的にどういうものなのかというと、【決められた場所で爪とぎをさせる】【爪とぎをして欲しくない場所を避けさせる】という2つの手段を使います。あくまで爪とぎはさせつつ、その場所だけを指定するという事ですね。こうすれば、猫も思う存分爪とぎができますし、飼い主も部屋を荒らされなくてすみます。

また、これは爪とぎに限った話ではありませんが、猫に何かを教えたい時はなるべく早い段階から始めるのがベスト。猫が初めて爪とぎをした時にはもう教え始めた方が良いでしょう。成猫になってからでも教える事はできますが、嫌がったり抵抗したりなどしてスムーズに行かないことが多いです。

爪とぎ用の場所を作る

爪とぎ用のグッズはホームセンターやペットショップで購入できます。ただし、ただ設置しただけだと猫も関心を示しません。購入したグッズで爪とぎをしてくれるように訓練させましょう。

といっても手順は簡単。猫が爪を研ぎそうになったらグッズまで誘導し、爪とぎをしたら褒めたりご褒美をあげるだけです。初めのうちは猫の手を持ってグッズにカリカリさせるのも良いでしょう。ある程度慣れてくると、猫もこの場所が爪を研ぐ場所だと理解して、飼い主の誘導が無くても爪とぎをするようになってきます。

もし間違った場所で爪を研いでしまったら、怒らずに誘導するか無視してください。飼い主が反応してしまうと、猫が「ここで研いだら反応してくれた」と認識してしまいます。

爪とぎして欲しくない場所への対策

爪を研ぐ場所を確保したら、次は大切な家具や壁など爪を研いで欲しくない場所に対して対策していきましょう。比較的メジャーな対策グッズとしては【対策シート(爪とぎ用)】【対策シート(爪とぎ防止用)】【防止スプレー】【ネイルキャップ】が挙げられます。それぞれメリットとデメリットがありますので、状況に応じて使い分ける事をおすすめします。ではこの4つに関して、軽くご紹介していきます。

・対策シート(爪とぎ用)

厚いダンボールや麻で作られたもので、用途は前項の爪とぎグッズとあまり変わりません。爪を研いでも壁や家具までは傷付くことがない上に、猫もストレスを抱えずにすみます。ただし、クズが落ちたり長期的には使えないなどの欠点も。

・対策シート(爪とぎ防止用)

ツルツルとした半透明のシートで、爪とぎ用とは真逆に爪を研がせないためのものです。爪を引っ掛ける事ができないため、猫が「ここでは爪を研げない」と認識してくれます。ただし、壁に貼り付ける関係上、使える素材が限定されます。

・防止スプレー

猫が嫌いな柑橘系のスプレーで、爪を研いで欲しくない場所に吹き付けて使用します。お手軽かつ安価な方法ですが、多量に吹き付けると猫のストレスの原因になってしまいます。また、匂いに慣れたり、そもそもそこまで柑橘系が苦手ではない猫に対しては効果が薄いです。

・ネイルキャップ

あまり知られていないのですが、実は猫用のネイルキャップというものもあります。猫の爪一つ一つに付けるため手間ではありますが、爪とぎそのものを封じるため一番効果的です。常に付けていると猫も嫌悪感を抱くため、あくまで緊急時に使用する程度にしておきましょう。

猫が気持ちよく爪とぎをするには

猫にとって爪とぎは本能からの行動であり、また何かを表現したい時の手段の一つでもあります。無理に止めさせてもストレスですし、飼い主としても出来るならのびのびとしていて欲しいですよね。今回、猫が爪とぎをやめなくてもいい方法について解説してきました。猫が気持ちよく爪とぎをして、飼い主もそれを見て癒やされるようになれば幸いです。

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