猫の去勢・避妊手術の流れや多頭飼育崩壊について解説します

猫を飼うなら必ず向き合うことになる去勢・避妊手術。猫のためにも手術したほうが良いとは思うものの、身体への負担や適切なタイミングなど気になることも多いでしょう。そもそも、本当に手術する必要性があるのかと、悩んでしまう人も少なくありません。

今回は猫の発情した時に行う行動や去勢・避妊手術の流れ、そして近年問題となっている多頭飼育崩壊について解説していきます。

目次

猫の発情期と発情行動

そもそも発情は猫が生存本能にしたがっているだけで、自分でコントロールできるものではありません。無理に抑えようとすればストレスになってしまったり、余計に行動が激しくなるだけです。

まずは発情したらどういった行動をするのかについて見ていきましょう。

オス猫が発情した時の特徴

オス猫には明確な発情期といわれる期間はなく、発情したメス猫の声やフェロモンに反応すると発情するため、性成熟が終わり次第いつでも交尾できる状態になります。交尾を許す側のメス猫とは違い、オス猫は自分が選ばれるために行動しなければいけない関係上、攻撃的になるなどメス猫よりも問題行動が多いです。では、具体的にどんな行動をとるのか見ていきましょう。

・いつもとは違う声で鳴く

発情したオス猫は自分の存在をメス猫に知らせるために、聞いたことのないような大きな声で鳴き続けます。また、他のオス猫に対する警戒の意図もあるようです。連続的かつ声も大きいため、騒音問題の原因となります。

・匂いの強い尿をスプレーする

メス猫へのアピールとオス猫に対するけん制のために、通常よりも匂いの強い尿をそこかしこにスプレーします。少量ではあるものの、その匂いは強烈かつ人や猫がよく通る道にスプレーするため、悪臭問題の原因になります。

・ほかのオス猫に対して攻撃的になる

他のオス猫よりも自分が優秀であることをメス猫にアピールするため、他のオス猫に対して攻撃的になります。また、人間に対しても同様に攻撃する事もあり、直接的な被害に繋がる可能性が高いです。

・家から脱走してメス猫の元へ向かう

発情したメス猫に会うために、家からの脱走を試みるようになります。猫は優れた身体能力に加えて頭も良く、人が出入りする時間などを把握して隙を伺う子もいるほどです。

メス猫が発情した時の特徴

メス猫は日照時間で発情の周期をコントロールしており、基本的には日が長くなる春や夏に発情期が到来します。ただし、近年は人工照明が増えた影響で秋や冬でも発情することがあり、一概にどの季節に発情するとは言い切れないようになってきています。発情したメス猫は特有の行動を取るので、時期だけではなく様子をみて発情したかどうかを判断できるといいですね。メス猫が発情した時に見られる行動は以下の通りです。

・いつもとは違う声で鳴く

オス猫に自分の存在をアピールするために、聞いたことがないような大きな声で鳴きます。オス猫と同様、騒音問題の元となる可能性があります。

・匂いの強い尿をスプレーする

頻度こそオス猫ほどではありませんが、メス猫も匂いの強い尿をそこかしこにスプレーすることもあります。こちらもオス猫と同じく、悪臭問題の原因になってしまいます。

・背中を床や家具に擦り付ける

発情したメス猫は恍惚状態になり、床や家具に背中をクネクネと擦り付けることがあります。この時に発するフェロモンは非常に広範囲に届き、室内飼いであっても隙間から漏れ出し、数百メートル離れたオス猫ですら反応します。

・お尻を高く持ち上げた姿勢になる

発情したメス猫はお腹を床につけて、お尻を持ち上げた姿勢をとる事があります。これはロードシスと呼ばれるもので、オス猫を受け入れる姿勢だと言われています。

猫の去勢・避妊手術

猫の去勢・避妊手術は、病気の予防や妊娠および出産の負担からペットを守るためのものです。とはいえ、どういった流れで手術を行うのか不安に思っている人も多いでしょう。

ここでは手術の流れや術後の自宅療養期間について解説します。

猫の去勢・避妊手術の流れ

猫の去勢・避妊手術は性成熟が始まる前後に行うのが理想であり、オス猫は生後6ヶ月前後、メス猫は生後4ヶ月前後が目安となります。ただし、猫の状態によっては身体の負担を考慮して手術を遅らせることもありますので、予め獣医師とよく相談しましょう。では具体的な流れについて説明します。

・共通の流れ

オス猫、メス猫共に、手術前に検査を行い、全身麻酔をしても大丈夫かどうか判断します。麻酔は身体にかかる負担も少なくないため、ここでしっかりと検査して貧血の有無や臓器に異常がないかなどを徹底的に調べます。検査で問題なければ、全身麻酔にて猫を眠らせて外科手術により精巣や卵巣、子宮を摘出します。

・去勢手術

精巣付近の皮膚を1cm〜1.5cm程度切開し、精巣を摘出します。その後止血と縫合をして終了です。猫の状態や動物病院によっては傷口の治りの早さを考慮して、縫合しない事もあります。所要時間はおよそ20分程度です。

・避妊手術

おへそから下部分を切開して開腹、卵巣のみ又は卵巣と子宮を摘出します。その後止血と縫合をして終了。所要時間はおよそ1時間程度です。

自宅療養期間の生活

オス猫、メス猫共に術後は傷口を弄ったりしないように、エリザベスカラーやエリザベスウェアを着用しながら生活します。もし猫が嫌がるようであれば、食事中などに少しだけ外しても大丈夫です。ただし、基本的には着用させた方が良いこと、目を離してしまわないようにする事は留意しておきしょう。

傷口は1週間程度で塞がり、それまでは動物病院から抗生剤や消炎剤が処方されます。また、獣医師から指定された期間中は激しい運動を避け、排便や食欲などに異常が見られた際は様子を見ようとせずにすぐに動物病院に連絡してください。

多頭飼育崩壊が招く悲惨な結末

近年、ネットニュースなどで多頭飼育崩壊に関するニュースが増えています。飼い主として最も避けたい事態ですが、なぜこのような事が起きてしまうのでしょうか。

ここでは多頭飼育崩壊の原因や、それによって周囲に与える影響について解説します。

多頭飼育崩壊はなぜ起きるのか?

多頭飼育そのものは極めて普通の飼育方法であり、2匹や2匹程度では経済的にも問題ないことが多いです。しかし、多頭飼育崩壊を起こした家庭の猫は、数十匹にも及ぶほどにまで数が増えたケースが大半を占めています。いくらなんでも、普通の家庭がそこまで増えた猫を全て適切に飼育出来るわけありません。

ではなぜ、そこまで増えてしまうのでしょうか。確かに猫の繁殖力は脅威的ですが、それだけが原因ではありません。実は過去に起きた事例のほとんどは、飼い主が何らかの理由で精神的及び肉体的に多大な問題を抱えてしまっている状況下によるものでした。

主な原因としては、高齢になって判断力や体力が衰えてしまっている、認知症や重度の精神疾患を患っているなどですが、これらの最大の問題点は【第三者の理解とサポートが必要不可欠】であること。独身世帯や高齢者夫婦が去勢・避妊手術をしていない猫を飼っている場合、誰にも気づかれないまま多頭飼育崩壊を起こしてしまう可能性があるのです。

多頭飼育崩壊の影響〜飼い主の生活の崩壊〜

ペットが増えすぎて飼い主が適切に飼育できる上限を超えると、糞尿やご飯の食べ残しを掃除できなくなり衛生環境が悪化します。それだけならただ汚いというだけの話ですが、更にそれを放置し続けるとやがてそれらが臭気を放ち始め、ハエなどの害虫やネズミなどの衛生動物が大量に発生するようになります。

そんな状況にいれば、感染症のリスクが高くなる他、臭気や汚れが溢れている環境は精神的にも悪影響を及ぼすのは火を見るよりも明らかでしょう。健康状態はもちろん、生命すら危ぶまれる状況にすらなりかねません。

また、ペットの数が増えるにつれてエサ代や医療費なども嵩んでしまうため、経済状況も完全に破綻します。そうなればいずれ自分のご飯も満足に食べられない、衣服を洗濯できない、水道光熱費を支払えないなど、生活に関わる衣食住にも影響が出てきます。

多頭飼育崩壊の影響〜ペットの健康状態〜

衛生環境の悪化は飼い主だけでなく、ペットの健康状態にも影響を及ぼします。その時の状況にもよりますが、動物愛護法における虐待の定義に触れてしまっている事も多いです。

実際、過去に保護された猫のほとんどが、【皮膚病や感染症を患っている】【酷くやせ細っている】【寄生虫に寄生されている】など悲惨な状態で発見されており、死亡したまま放置されている個体も少なくありません。中には共食いしたと思われる形跡があった事例も……。

また例え保護できたとしても、そんな劣悪な環境で生きてきた彼らは人間に対して強い不信感を持っています。そのため新しい里親も中々見つけることができず、凶暴な猫や大病を患った猫は殺処分される可能性も高いです。

多頭飼育崩壊の影響〜周囲の環境

これまで解説した通り、多頭飼育崩壊の起きた現場は悪臭や害虫、衛生動物のたまり場となっています。その影響がその家だけで済むはずがなく、感染症の蔓延など、近隣にも多大な被害を及ぼします。最悪の場合、増えすぎた猫が脱走して周囲の物や人に危害を加えてしまう可能性も考えられます。

飼い主として猫のためにできること

いくら猫のためとはいえ、去勢・避妊手術をするのをためらってしまう人も多いでしょう。しかし、病気を予防したり発情による問題行動を抑える事が出来ますし、なにより意図しない繁殖は誰の幸せにも繋がりません。

発情期や問題行動、そして多頭飼育崩壊についてしっかり理解を深め、なるべく早期に動物病院に相談してみましょう。大切なのは、どうするのが一番猫のためになるのかを常に考えることです。

天国への扉コラム