狂犬病の恐ろしさと予防ワクチンの接種方法について解説

「狂犬病って名前だけは有名だけど、本当に危険なの?」日本では長らく感染事例が報告されていないため、こういった疑問を抱く方も少なくありません。実際、今の日本で感染する事はほぼないでしょうし、副作用や接種料金から飼い犬にワクチンを打つのを躊躇っている人もいます。

しかし、それはあくまで日本の話。世界では未だに狂犬病で多くの方が亡くなっていますし、その脅威がいつまた日本を襲うのかも分かりません。今回は狂犬病の恐ろしさとワクチン接種の方法について解説していきます。

目次

狂犬病とは

そもそも狂犬病とはどんな病気なのか、ワクチン接種を義務付けられるほど危険なのでしょうか?日本での感染報告が無い今だからこそ、改めてその脅威について見ていきましょう。

致死率100%の感染病

狂犬病は簡潔に言えば、治療法がない致死率ほぼ100%の感染病です。狂犬という名前からも分かるように、基本的にウイルスに感染した犬に噛まれることで感染しますが、それ以外にも野生動物に噛まれて感染した事例もあります。ただし、人から人へ感染した事例は報告されていません。

潜伏期間は1〜3ヶ月ほどで、その間は噛まれた場所が少し傷む程度。しかし、一度発症すると頭痛や嘔吐から始まり、幻覚や意識障害に襲われ、その後一週間程度で全身けいれん及び不整脈で死に至ります。またその間、水の刺激でけいれんしてしまって水が飲めなくなることから恐水病とも呼ばれています。

先述したように明確な治療法が無いため、医療機関ではメンタルケアや症状の緩和しかできません。

日本で起きた狂犬病

今でこそ日本で感染した事例は報告されていませんが、ひと昔前は日本も狂犬病の脅威にありました。転機となったのは1923年、関東大震災の時です。

当時の混乱の影響もあり、東京や大阪を始めとして様々な地域で狂犬病が流行し、1925年までの3年間で何と9,093頭もの感染報告がありました。それ以降、飼い犬の予防接種と野良犬の取り締まりがより厳しくなり、感染報告数も目に見えて減少。1957年を境に日本の感染報告は0となったのです。

ただし、これはあくまで日本で感染していない事例。海外で狂犬病に感染し、日本で発症した事例は未だに報告されています。直近では2020年に14年ぶりに狂犬病の患者が亡くなっています。

世界は未だ狂犬病の脅威にある

日本がここまで感染事例が少ないのは、ワクチン接種を徹底した他に島国だからというのも大きな理由です。実際、日本以外でもオーストラリアやスウェーデンなどの国では狂犬病の発生はありません。しかし、裏を返せばそれ以外の国は狂犬病の脅威の中にあり、年間で4万〜7万人の人が狂犬病で命を落としています。

人から人への感染はないと言っても、犬やコウモリなどのありふれた動物から感染するために一度流行ると殲滅するのは非常に困難。医療先進国はともかくとして、すべての国が十分なワクチンを確保できるとは限りません。狂犬病は決して過去のものではなく、未だ恐ろしい病気なのです。

狂犬病予防ワクチンについて

狂犬病は恐ろしい感染症であり、日本がその脅威を取り除けたのは飼い主の皆さまがワクチン接種を今日まで忘れずに行ってきたからです。現在犬を飼っている人も、これから犬を飼おうとしている人も、改めて接種方法について見ていきましょう。

狂犬病予防ワクチンの接種方法

犬を飼い始めたばかりの人の中には、狂犬病予防ワクチンの接種方法が分からないという人も多いでしょう。実際、初めての犬は登録作業も行わなければならないため少し手順が複雑です。そこで、犬を飼ってからワクチンを打つまでの流れについて簡単に解説していきます。

・犬の登録作業

犬は狂犬病予防法により、生後91日以内に登録作業を行います。登録は動物管理センター、保健所、区役所、委託している動物病院でできますので、忘れずに登録しましょう。登録時に証明として鑑札(かんさつ)が交付されます。登録料金は3,200円、鑑札の再発行には1,800円かかります。

・ワクチン接種

生後91日以降でまだワクチン接種をしていない場合は、飼い始めてから30日以内に集団接種又は動物病院で接種できます。それ以降は毎年4月〜6月の接種期間内に接種しましょう。また、予防接種を受けた時に狂犬病予防接種票が交付されます。

海外旅行する際は人もワクチンを

狂犬病の発症事例のある国へ旅行する際は、事前に狂犬病予防ワクチンの接種を強く推奨します。厚生労働省の発表では2回、WHOの発表では3回の接種が推奨されていますので、必ず複数回接種してください。

もし海外で犬や猫、その他野生動物に噛まれた際は速やかに傷口を洗浄し、医療機関にて診察を受けましょう。診察の結果、狂犬病と診断された場合は暴露後ワクチンを受ける事になります。暴露後ワクチンは複数回にわたって行いますが、現地で終了しなかった場合は日本でも続行できます。

また、海外に犬を連れて行く、もしくは犬を連れて帰ってきた場合は検疫所にて検疫を行う必要があります。

ワクチンの副作用

狂犬病予防ワクチンを愛犬に打つ事に対し、副作用を懸念している飼い主は多いはず。厚生労働省によれば、狂犬病予防ワクチンによる副作用として疼痛、食欲不振、下痢や嘔吐などの副反応が認められるケースがあるとのこと。しかし、極めて稀かつ一過性のため、すぐに症状は治まります。

それ以外では、過敏体質の犬はアナフィラキシー反応やアレルギー反応が見られる可能性もあります。ただし、確率としては0.0007%程度であり、これは混合ワクチンよりも更に低確率です。

日本で二度と狂犬病を発生させないため

確かに現代の日本では狂犬病に感染する可能性はほぼ皆無です。そのためか、時折ワクチンの必要性を疑問視する声や、副作用の危険性から打たせたくないという声が上がります。しかし、日本で狂犬病の危険が無いのはそのワクチンを徹底しているからに他なりません。

世界ではまだまだ感染の危険性は残っていますし、日本で今後も感染しないとは限りません。そして感染し、発症してしまえばほぼ確実に命を落とし、仮に生き残ったとしても一生後遺症に苦しむことになります。【ワクチンを打たなくても安全】なのではなく、【ワクチンを打ち続けるから安全】なのです。

今の日本があるのは、犬を飼っている飼い主が毎年忘れずにワクチン接種をしているから。そして今後も感染症から日本を守るために、これからも定期的なワクチン接種を続けていきましょう。

天国への扉コラム